身体のバランスを見極め、整えることの重要性

「いくら噛み合わせばかりを調整しても、身体のバランスを見極めた上で整えていかなければ意味がない」
 私がはじめてそのことに気がついたのは、今から十数年前のことでした。その当時はある程度は噛み合わせというものが理解できてきて、いろいろなセミナーでの教えを実践していた頃でした。

 総入れ歯のご老人が来院されて、新しい入れ歯を作りたいとのご要望でした。
 私は日頃の勉強の成果を発揮したいとばかりに、真剣にこの入れ歯作りにアプローチすることにしました。型を取り、模型を起こし、患者さんの噛み合わせを確認し、仮の入れ歯を試適し、いよいよ出来上がった入れ歯を装着するときが来ました。

 ところが!?噛み合わせが合わないのです。
 技工所のミスかと思い、連絡を取って工程を確認しました。しかし、疑わしいところはひとつもありませんでした。
 それでは私の技術に問題があったのでしょうか。

 私は気持ちを切り替えて患者さんにうかがいました。
「型取りをしてから入れ歯ができるまでの間に、何か生活の中で変化はありませんでしたか?」
 何か心配事でもできて、強く歯を噛みしめるようなことがあったのではないだろうか。そのために歯が動いてしまったという可能性はあります。
 しかし、ご老人にそのような変化は何もないということでした。

「でもねえ、先日階段から落ちて腰を打ってしまいましたよ」

 その瞬間私は「これだ、これしかない!」と思いました。
 何も歯に負担をかけるようなことをしなくても、転んで身体を打つようなことがあればそれだけで身体のバランスが崩れ、噛み合わせに影響が出る。そのことに思い当たったのです。

 まさに「歯は身体、身体は歯」そのものなのです。噛み合わせの調整とは歯だけを診るのではなく、身体全体の観点から調整していく必要があるのです。

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